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なないろやさい
加波山市場|専業農家|浅賀清一

桜川市のこだわり農家 「浅賀清一」さんレポート

生鮮

2021年8月中旬、桜川市で浅賀清一さんと奥様にお話をうかがいました。加波山市場ではピーマン・ほうれん草・小松菜でお馴染みの浅賀さん。夏は鮮やかに輝く均等で美しい大きなピーマンにファンが付くほど!Twitterのフォロワー間で浅賀さんのピーマンの肉詰めブームが起きたことも。お話を聞きながらピーマンを育てているハウスと近隣の畑を少し見学させていただきました。

以下、浅賀 清一さん:浅 奥様:奥 加波山市場:加

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「『特別栽培農産物』について教えてください!」

浅「化学肥料や化学合成農薬を削減するなど一定の条件を満たして生産された農産物を『特別栽培農産物』として茨城県が認証する制度があります。この制度によって、茨城県産農産物に対する消費者の信頼を高め、より安全で安心な農産物や環境にやさしい農産物を求める消費者ニーズに対応した農業生産の拡大と流通の適正化が図られています。ひとつひとつの作物毎に一定期間のみ認証されるため、定期的に更新が必要です。今はほうれん草・小松菜・ピーマンが『特別栽培農産物』に指定されています。」

「おふたりとも代々続く野菜農家なのでしょうか?」

浅「両親含め生まれも育ちも桜川市です。元々は田んぼ農家でした。真壁高校の農業科を卒業したあと、田んぼ以外になにかできないかと考え、原木しいたけを20年ほど栽培していました。腰を痛めてしまい、結果的に野菜メインの農家に転向することになりました。野菜に転向してから18年ほど経ちます。メインは畑ですが、田んぼも多少は維持し続けています。自給自足を目指しているので、家庭用の野菜畑にはきゅうり・ネギ・ナスなど多くの日常野菜を栽培しています。ただそれらはあくまでも家族が食べるものです。今の出荷用メイン野菜はピーマン・ほうれん草・小松菜、サブ野菜としてカブ・キャベツを栽培しています。」

奥「私の出身は筑西市です。私自身は嫁ぐまで栃木県の企業で働いていました。主人は、本人も当たり前すぎて気付いていないけれど、きっと野菜を育てるのが好きなんだと思いますよ。農家100%の人なんです(笑)」

浅「実家が農家だったから当たり前のように農業科へ行き、当たり前のように農大へ行き、 それが自然な流れだっただけです。それが日常だったし、親から継ぐ上で意識の変化や特別な気持ちの切り替えなどはなかったと思います。」

「野菜づくりへのこだわりはありますか?」

浅「100%有機栽培では経営が成り立たないし、 化学肥料を使用した慣行栽培(*)ではすぐに連作障害などの病気になってしまう。片寄らずどちらの知識も学び、必要に応じて対応していくことが大切なんじゃないかなと感じています。だから有機肥料も化学肥料もどちらもバランスよく使っています。」

奥「こだわりはないといえばないね(笑)」

浅「例えば、有機肥料にこだわって雑草をすべて人間の手で取り除くことは不可能です。だからといって、大量生産のために化学肥料に頼りすぎれば、ほうれん草の甘みが消えてしまいます。何事もこだわりすぎないことです。いつでも柔軟な対応が求められています。」

奥「どうしても化学肥料を使いすぎた野菜は自分達自身も食べる気が起きませんからね。」

(*慣行栽培:収量増産のために化学肥料を投入し、また病虫害や除草のために農薬を使用し、大規模かつ効率的に栽培する方法です。国内に流通する99%以上が慣行栽培の作物といわれています。使用される農薬の使用時期や回数、及び化学肥料の窒素成分量等は、栽培が行われる地域において定められています。)

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左上:種を蒔いて25日程の小松菜
右上:左側は防虫ネット(小松菜)/右側は日避けネット(ほうれん草)


「野菜づくりの難しさとは?」

浅「やっぱり天災が一番困ります。たとえ予測できていたとしても対応は不可能だと思います。2011年の放射能による出荷停止のショックはいちばん大きかったです。茨城県は長い間出荷停止、検査結果の数値が正常かどうかはまったく関係なく、風評被害は止められませんでした。助成金などの情報を個人農家が入手することは難しく、やっと回ってきた情報を活用しようにも手続きが複雑でなかなかスムーズに進まないことばかりでした。」

「どこの組合にも所属せずに個人農家を貫いている理由はありますか?」

浅「若い頃は誘いもあったけれど、当時は椎茸を育てていて椎茸のグループが少なかったことは理由のひとつかもしれません。それからはなんとなく流れで個人農家のままなだけですね。どこかに所属することで天災などの非常時には助け合いが可能だけれど、基本的には個人の方が仲介が入らないので『ダメなものはダメ!』という基準がわかりやすいと思います。それに新しいことに挑戦しやすかったりする。数年前、直売所以外に『築地のこだわり野菜コーナー』へ出荷していたことがありました。ロマネスコを育てていたことがきっかけでしたが、収穫量が確保できなかったり、価格設定の折り合いがつかなかったりして状況は常に厳しかったです。今はもう出荷していません。」

「最近の悩みや今後の課題などについてお聞かせください。」

浅「永遠の悩みは機械を導入しようかしないか(笑)それから5月頃に出荷用の路地にんじんの栽培を検討中です。」

奥「にんじんは泥を落とす必要があって出荷に手間がかかるので、なかなか決断できていませんね。」

浅「最大の悩みは後継者問題ですかね。水戸なんかではNPO法人による支援プロジェクトの話を耳にすることもあるけれど、桜川周辺ではまだ聞きませんね。そもそも県西は専業農家が少なく、兼業農家や家庭菜園が多い気がします。元校長先生とか元公務員の人たちが退職後に農業を始めたりしているという話をよく聞きますよ。ただ、まだ年齢的に余裕があるので悩みつつも本腰を入れて解決するための活動はしていません。東京からでも誰か来れば支援として作業所の提供くらいはしたいと思っていますよ。」

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「加波山市場へ期待することを聞かせてください。」

浅「直売所としての考え方だけではなく、もっと地域商社として動いてほしいかなぁ。例えば、桜川市内の給食センターや福祉施設への仲介をしてほしいです。もちろん加波山市場が盛り上がってくれるのがいちばんです。単純な話、もっともっとたくさんの野菜が売れるようになってほしいけれど、そのために僕たちができることは限られています。」

奥「売れても売れなくてもまずはみんなの意識を定着させることが大事ですよね。『あそこに行けばいつでもほうれん草があるね』ということを認知させることの重要性と難しさを感じています。」

浅「今はただ希望を抱いているだけです(笑)だから、加波山市場としてだけではなく、株式会社クラセル桜川としての動きに期待しています。フルーツ栽培ではないし自宅に通ってこられることを望んでいるわけではありません。個人としての契約ではなく、”加波山市場”という窓口を通して野菜がたくさん売れるように根気強く願っています。」

こだわらないというこだわり
浅賀さんと話しているとブレることのない基本的な”在り方”に気付かされます。それは農家としてではなく、人として、目の前にある情報をどう適切に扱うことができるのか否か、正しいか正しくないかではなく、自分が信じているもののために何ができるのかを常に冷静に見極めて判断していく。寄り道せずに、一歩一歩進んでいく姿勢はまさに野菜を育てることに通じているのではないでしょうか。他人や時代に振り回されないこと。しっかりと自分の目で見極め、今できることやり、求められていることに応えていく。肩の力を抜き自然体のまま、こだわりはないと語れる清々しさこそが浅賀さんらしさです。

【加波山市場に並ぶ野菜たちを一部紹介】
ほうれん草(10〜6月)・小松菜(ほとんど通年)・ピーマン(5〜11月)・キャベツ(11月)・かぶ(4〜6月&10月〜1月)・にんじん(5月)etc

※出荷時期はあくまでも目安なのでずれることがありますがご了承ください。

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