バラ農家からブドウ農家にシフトチェンジし、御年88歳の酒井さん。体力と向き合いながらも畑に立ち続け、いまはシャインマスカットやピオーネ、長野パープルまで夫婦で丁寧に育てています。
直売所「加波山市場」とのご縁を大切に、とおっしゃってくれる優しい酒井さんとのやり取りを楽しんでください。


まずは質問していいですか~。
ぶどうをする前は、何をされていたんですか。

バラを生産して、フラワーパークにほとんど納入していました。

なるほど。じゃあ元々は農家さんなんですね。

そうですね。
最初の一言で、現場の空気が少しだけ柔らかくなりました。
バラからぶどうへ。きっかけは何だったのだろう?

このバラの納品を、いったいなぜやめたんでしょう。

体力的に限界なんですよ。 バラは一本一本、全部手をかけないとできないんですね。
それで、ぶどうに切り替えたんです。
切り替えたというか、もう仕事をやめて、少しでも楽にしよう…って思ったんですが。
バラは手のかかる作物。
一本一本に向き合う時間と体力。
言葉の端々から、積み重ねてきた年月がにじみます。

最初は近所や友達にたくさんくれたんですが、もらうと逆に迷惑をかけちゃうことができないので…。
販売したほうがいいかなって。


ぶどうは全くの初心者からですか?

初心者です。
誰にもならってないんです。
だから今でもわかってないところもあるかもしれない。
最初は1本だけ。それが大きくなって今になっています。
シャインは全部で4本。大きな木になってくれました。
いきなり新品種の世界に飛び込む、その勇気ですよね~。

加波山市場に出したきっかけってありますか?
結構前からですか?

最初からです。初期メンバー。
うちの場合、どうしてもらうというより出してもらっているだけで満足です。
これからもよろしくお願いします。

ぶどう栽培は奥様もされているんですか?

一緒に毎日お世話しています。
夫婦で並んで房を見上げる背中。素敵だなと思いながら私はお二人を見ていました。

一番奥にある一本の木が、あれが長野パープル。
もう長野パープルを5年くらい…ですかね、
今、4年目かな。
非常に作りにくい品種で、割れちゃうんですよ。
たまたま今年は割れが少なくて良かった。

それは良かったですね!
大きな前進ですよ!

でもいつまで続けられるか・・・

ええ!
いつまでも続けてほしいですけどねー!
とは言え酒井さんは88歳。
健康ではあるけど、不安は大きいと話していました。

ぶどう栽培をやりがいとしていますが、ほかに趣味みたいなものはありますか?

酒かな・・・
ほぼ毎日のんでいます。
少しですけどね(笑)
こんなおっとりとした酒井さんでした。

ここからは私が感じた事をブログ風にまとめてみました。
現役88歳の酒井さんと出会って
直売所「加波山市場」で出会った酒井さんは、御年88歳。だけどその姿は年齢をまったく感じさせませんでした。
もともとはバラ農家として長年フラワーパークに花を納めていた方で、今はぶどう農家に転身されています。
正直、88歳で現役というだけで驚きです。
でもお話を聞くと、その理由はとても自然なものでした。
バラは一本一本に接ぎ木をしなければならず、手間も体力もかかる。
限界を感じて手を引いたけれど、土に向き合うことをやめたくはなかった。
そこで選んだのがぶどうでした。
ぶどうへの真剣さと楽しさ
畑を案内していただくと、シャインマスカット、ピオーネ、長野パープルなどが立派に育っていました。
枝を整理することや房を間引くことなど、細かな管理が必要だと丁寧に説明してくださいました。
特に長野パープルの話は印象的でした。「非常に作りにくい品種で、すぐ割れちゃうんだ」と言いながらも、今年は割れが少ないと嬉しそうに話す表情。
難しいからこそ挑戦する姿に、農家としての意地と誇りを感じました。

夫婦で支える日常
奥様と二人三脚で作業をされているのも大きな力になっているようです。
腰をかがめる作業は大変だろうと思うのですが、「一緒にやってるから続けられる」と笑顔で語る酒井さん。その言葉に、夫婦で営む農業の温かさを感じました。
顔の見える農業へ
私は桜川市地域おこし協力隊として、生産者の方のストーリーを発信するお手伝いをしています。
酒井さんにも「畑での写真やご夫婦の姿を紹介したら、きっとお客さんも安心して買ってくれるはず」と提案しました。少し照れくさそうにされていましたが、ご主人は「顔を出したほうがいいんじゃないか」と笑っていて、そのやり取りも微笑ましかったです。
学んだこととこれから
お話を伺って強く感じたのは、「年齢ではなく、気持ちと環境が人を動かしている」ということです。バラからぶどうへ転身した背景には、体力の限界という現実もありましたが、それでも農業を続けたいという思いが酒井さんを支えています。
そして、奥様と一緒に日々の作業を楽しんでいる姿は、まさに生き方そのものが魅力的でした。
生産者さんの顔や物語を発信して、酒井さんのような方々の営みを多くの人に知ってもらいたい。
そう強く思わせてくれる時間でした。
最後に
88歳という年齢を感じさせない酒井さんの働きぶりは、ただ驚きではなく、希望そのものでした。
畑で交わす会話は、収量や品種名だけでは語り切れない「暮らしの温度」を運んできます。
一本一本に手をかけてきたバラの日々、体力との折り合い、ぶどうへ舵を切る決断。
シャインマスカットやピオーネの色づきで甘みを測る眼差しは、そのまま積み重ねの証でした。
直売所という場がつなぐのは、商品だけでなく人と人。写真やイラストで顔が見える発信を整えれば、ぶどう棚の下の空気まで一緒に届くはずです。
今日の一枚が、来年の誰かの「買ってみたい」に変わるー
そんな確かな手触りを信じて、次の一歩へ進みます。
これからも「加波山市場」に並ぶ酒井さんのぶどうを見かけるたびに、今日の会話を思い出し、その背後にある物語をお客さんにも伝えていきたいと思います。



