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なないろやさい
加波山市場|KEK|メロン部会

フルーツトマトと言えば KEKメロン部会 トマト農家が何故メロン?

果物

加波山市場ではスーパーフルーツトマトてるて姫・きゅうり・イチゴ・こだますいか・アールスメロンでお馴染みのKEKグループですが、生産者の方々と直接お話しするのは初めてです。9月に販売開始予定のアールスメロンが、今年も順調に育っているという素敵な情報をいただきました。2021年7月中旬、KEK事務局の谷畑尚吾さん立ち会いの下、メロン部会長の広瀬勉さん・メンバーの清水和巳さんからお話をうかがいました。とても穏やかな広瀬さんと陽気で気さくな清水さん、インタビューは終始笑いが尽きませんでした。そして見渡す限りメロンのハウスを案内していただき、9月が待ちきれなくなってしまいました。

以下、広瀬勉さん:広/清水和巳さん:清/谷畑尚吾さん:谷/加波山市場:加

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メロン部会長広瀬勉さん


「2022年でKEKグループ発足から50周年!おめでとうございます!ところで、KEKってなんですか?(笑)」

谷「ありがとうございます。KEKグループは『協和施設園芸協同組合』の略称です。若いトマト農家の有志数名による組合の発足が出発点でした。当時、農協はすでに大きい組織であり、やりたいことへ挑戦しづらい環境がありました。 当然、大きい組織全体の改革は難しかったと思います。そこで有志を募り農協の学校として発足したKEKですが、おかげさまで今では組合も大きくなり、トマトだけではなく、スーパーフルーツトマトてるて姫・きゅうり・イチゴ・こだますいか・アールスメロンを生産する方々が所属しています。代表の宮田という人物がいるんですけれども、『補助金は絶対にもらわない』という思想が常に大前提としてあります。生産者自らの力を合わせてきた結果、新しいことに挑戦し続けることが可能になり、安心安全の信頼実績を保った現在のKEKがあります。」


「広瀬さんと清水さんの紹介もお願いします!」

谷「メロン部会長の広瀬勉さんは硬めのメロン派!もぎって3日目のフォークで食べられるかたさがベスト!清水さんは柔らかいメロン派!もぎって1週間ほどのスプーンで食べられるかたさがたまらない!」

加「ありがとうございました〜!(パチパチパチ)」
加「と、言いたいところですが、真面目にお願いいたします(笑)」

谷「はい(笑)ではご本人たちにお願いしましょう!」

清「性格が表れているんだよ。俺は柔らかめ!」

広「なにいってるんだか。」

加「おぉ!おふたりの相棒歴の長さを感じました。」

清「もう40年来の付き合いになりますからね。」

加「では、緊張もほぐれてきたようなのでここからは真面目に進めていきましょう!(笑)」

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各ビニールハウス毎に種を蒔く時期をずらすことで出荷時期を調整しています。
支柱は縦方向に生育させるために立てられています。


「そもそもトマト組合で何故メロンを育てることになったのでしょうか?」

清「トマトは秋から春に終わってしまうので、夏の暇な時間に育てられる作物を探していました。きっかけは40年程前に『栽培に挑戦してみないか?』と声をかけられたことです。初期メンバーは5人ほどで、私たちもまだ20歳前後でした。F1(※1)ではなくメロンの実からメロンを栽培するというものでしたが、育てても半分ほどしか売り物として出荷できませんでした。ただ、当時は桜川でメロンが収穫できるだけでも十分にすごかったんです。プリンスメロンとは異なる美味しいメロンにみんな感動したのを覚えています。きっとその時にメロンの魅力に取り憑かれてしまったんですね。すぐに挑戦してみましたがうまくいかず、諦めて1〜2年経った頃、再びきっかけが訪れました。現在の代表、宮田がTV番組で仕入れた情報を頼りに九州の栽培所へすぐに連絡を取って、新しい品種のメロンで再挑戦しました。ただし今度は収穫はうまくいくも糖度がのらなかった。それでも諦められずに育て方を試行錯誤しました。当時はメロンブームで新しい品種が次々に登場していたことも後押しとなっていたのかもしれません。それから数年後、直売所で販売できるレベルに到達しました。たしかその頃に廣瀬がメンバーに加入したんだったよなぁ。」

広「私も最初は抑制トマト(※2)を育てるために組合に所属していました。ただ土地がトマトに合っていなかったため、途中からメロンメンバーに加わることになりました。現在はきゅうり・メロンを育てています。」

(※1)F1品種は、「メンデルの法則」で有名な「雑種強勢」の特性を生かし、優良な特性を持った親株同士を交雑させてつくられています。流通するほとんどの野菜はF1品種です。
例えば、「形はきれいだけれど味がいまひとつ」な母親と、「不格好だけれど美味しい」 父親を掛け合わせた場合、雑種強勢の法則で「形も味も良い」子供、つまりF1が誕生します。
F1品種は、その一代に限って品種の特徴を持った作物を栽培でき、品質や収量、栽培容易性といった農業経営の効率化に一役買っています。しかし、そこから採種した二代目(F2)は形質を維持できないどころか不揃いなものが多くなり、品質低下することがほとんどです。 それでもF1は現代農業では不可欠です。一斉に発芽して足並みを揃えて生育し、一定量の収穫量を確保できます。 そして病虫害に強く、大きさや形が揃っていて箱詰めしやすく、物流コストは下がります。結果として値付けしやすく、取り扱いやすくて見栄えもするので、流通や小売りのみならず消費者のニーズを優先しているといえます。

(※2)抑制トマト:秋に収穫するトマト/促成トマト:春に収穫するトマト

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交配はミツバチの力を借ります。育ちはじめたら1本の木に1玉だけ残していきます。


「加波山市場では退職後にセカンドライフとして農家の道へ進まれた生産者の方も多いのですが、おふたりは最初から農家になることを選ばれました。人生を捧げたといっても過言ではありませんね。心境の変化などはありますか?」

清「父親が早くに亡くなったから将来が決まるのは早かったかもしれないです。高校は家が近かったので真岡の農業高校に通っていて、卒業してからはすぐにKEKで働きはじめました。それから長いこと夫婦でやってきたけれど、最近、息子夫婦が関わるようになってからは若い世代に合わせようという考え方に変わってきています。彼らはハウス専門農家なので田んぼや畑を維持する余裕はないようです。今は土地の多くを他人に貸しています。ただ、土地を管理できるだけの人手が足りず、兼業農家の減少が桜川に限らず日本の実情となっています。」

広「どうだかなぁ(笑)若い頃とは当然考え方も違います。兎にも角にも夫婦二人三脚だからこそ体調を崩さないことがいちばん大切。ひとりが倒れたとき、もうひとりでやり切ることは不可能です。あとは長年の経験からうまく手を抜けるところは抜けるようになったかもしれない。夏はとにかく暑さとの戦いになりますからね。」

「あれから40年!こだわりや長年の勘のようなものについてお聞かせください。」

清「育てる上で作物の性質がわかるようになってきたような気がします。例えばメロンは暑さに強いけれど、きゅうりは少し違う。それからきゅうりは病気に強い。同じ瓜類でもみんな少しづつ性質が異なっています。広瀬と同じで、若い頃は手の抜き方が分からなくて、手を抜いたらそこが一番大切だったなんていうこともありました(笑)それでも天候の悩みは永遠に尽きません。定期的にやってくる台風被害はどうしても避けることができないので。あとは若い世代とどう向き合っていくのか、こだわりで後継者がいなくなってしまっては意味がありませんからね。」

広「ないなぁ(笑)この歳になると体調管理がすべてといえるかもしれません。倒れてしまったら終わりです。」

谷「メロンは糖度14以上が合格ラインなのですが、試割りをして糖度計をのぞくとき、広瀬さんはとてもニコニコの笑顔を見せてくれます。僕が考えるに、糖度計をのぞいたときの広瀬さんの表情こそがメロン栽培におけるこだわりなのではないでしょうか!」

「それでは最後に美味しいメロンの選び方を教えてください!」

広「メロンはもぎったら糖度は変わりません。ただ、追熟することにより柔らかさが変わり、舌で感じる甘さに影響がでてきます。」

清「好みは個人差があるのでオススメは難しいですね。まずは硬めと柔らかめどちらが好きか食べ比べてみるといいかもしれません。」

谷「通常もぎったその日に直売所に並びます。一般的に収穫前のタイミングでは3日で1度糖度が上がるとされています。試割りの段階で14度をクリアしたメロンは収穫せずに、さらに3日程待ち糖度を上げます。そのため実際に店頭に並ぶメロンは糖度15度前後のものとなります。あとは硬めの広瀬さん派は店頭に並んでから2〜3日以内に、柔らかめの清水さん派は1週間くらいが食べ頃の目安になると思います。売り場のスタッフに収穫日を聞いてみるといいかもしれませんね。召し上がる1時間ほど前に冷蔵庫でよく冷やしておくと美味しいですよ。」

メロンの甘さは伝えたい想いの強さに比例します。
広瀬さんの口数は少ないけれどハウスを案内してくださるときや、インタビュー中の様子で伝わってくる作物への想いは、私自身うまく言葉にできないものがありました。KEKのアールスメロンを食べたことがある人には、その想いがすでに伝わっているのではないでしょうか。愛妻家の広瀬さんと、息子夫婦はもちろん次世代のことを考えている清水さんでした。素敵な時間を共有していただきありがとうございました。
「地元の人間が新鮮な美味しい食材を食べられず、スーパーをはじめとした大型食料品店に並ぶ新鮮さを失った野菜を食べている現状を打破したい!」さらには「子どもたちに地元への郷土愛や誇りを伝えていくことで、農業への可能性をもっと広げられるのではないか?」そのような想いからまずは”作り手と買い手の距離を縮めていく”ための一歩として、インタビューの機会を設けさてていただきました。心の底から同じ想いを抱えているけれど、現実は作物を栽培することが忙しすぎて情報発信にまで手が回らないという話はよく耳にします。現場にいる生産者の方々の声をありのままに受け取っていただければと思います。

【加波山市場に並ぶ野菜たちを一部紹介】
トマト(1〜7月/8〜12月)・スーパーフルーツトマトてるて姫(2〜6月)・きゅうり(1〜6月/8〜11月)・イチゴ(1〜5月/11〜12月)・こだますいか(4〜6月)・アールスメロン(9月)etc

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※出荷時期はあくまでも目安なのでずれることがありますがご了承ください。

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左:清水さん/右:広瀬さん